−『悪夢の地底遭難・血を吸う斧連続恐怖の襲撃』−

 長い題名です。しかも前半はパニック映画風で後半はホラー映画調です。しかも前半と後半、どちらがメインタイトルか分からない映画です(正解は前半)。まさか命名したのは大蔵貢ではないでしょうけれど、何ともインチキ臭い題名です。よもやオムニバス映画なんて想像する人はいないでしょうが、この映画、本当にそのまんまの内容の映画でした。

 宝の地図とやらを手に入れた男達数人の仲良しグループが、田舎の古井戸に探検に出かけます。さあここからジュール・ベルヌのような魅惑の幻想世界が繰り広げられるかというと、そこはB級映画、あっという間に落盤事故が起こり、狭く暗い空間に男達は閉じこめられます。呼べど叫べど助けなく、時間ばかりが過ぎていき、男達はしだいにイラついてきます。それと共に、彼等を飢餓が襲います。

「誰かを食糧にしよう」

 アンデスの聖餐よりもアクティブに、彼等は食糧危機の解決方法を提示します。全員でくじを引き、ハズレを引いた奴の片腕をみんなで喰おうという事で話がまとまります。もっとも当たるのも嫌なものですが、ハズれた方はもっと嫌です。ハズレを引いた奴が抵抗し、「待ってくれ、もう少し。あと数時間待ってくれ」と泣いて乞うのを「もう待てねぇ」と仲間全員で押さえつけ、片腕を切り落としてみんなで食べてしまいます。ところがその数時間後、外から救助隊が駆け付けて来たのです。男達は共謀し、「あいつは落盤事故で片腕を失った。そのショックでとんでもない事を口走るようになったんだ」とでっち上げて、カニバル事件を闇に葬り、男を精神病院に送り込んでしまいます。

 ところが数年後、その男が退院したという話が伝わってきます。危惧する彼の腕を喰った仲間達。その不安は的中し、一人が襲われて片腕を切り落とされてしまいます。彼等は男の所在を確かめんと彼の娘に居所を聞きますが、娘は知らないと言います。「君のお父さんは事故で頭がどうかしてしまって僕たちを逆恨みしているんだ、しかし僕たちは彼に犯罪を起こさせたくないんだ」と彼等は都合のいいことを言い、男の捜索に協力する約束を娘と取り付けます。しかしその後も彼等の周囲に斧を持った男の姿がまといつき、彼等は次々と襲われていきます。

 そしてようやく、男の所在がわかったという娘の知らせに、彼女と共に最後の一人が慌てて男の隠れ家に駆け付けます。と思った瞬間、彼は密室に閉じ込められます。扉の覗き窓から覗く、娘とその弟のギラギラした、笑いの眼。別室には、車椅子に身を沈めた、彼等の父親がいました。そう、既に腕を喰われた男はそのショックで廃人と化し、彼の話を信じた息子と娘が彼の代わりに復讐をしていたのです。家具一つ、食糧一つ無い部屋の中で、絶叫する最後の一人。そんな彼に、娘が差し入れをします。

「生きたければ、腕でも食べれば?」

 それは一本の斧でした。以上、因果応報をめぐる、誰が善人だか悪人だかわからない、いやーな気持ちにさせられる一本でした。


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