−『キラー・アーンツ』−

 '70年代のジョーズが引き起こした動物パニック映画ブームは「テンタクルズ」をはじめとする動物パニック映画ブームを……って、もう何回映画秘宝で書かれたんでしょうね?

 サメ→動物と来て、テレビには昆虫パニック未公開映画があふれ返りました。その大半は蜂と蜘蛛。で、「キラー・ビー2」を製作したピーター・ネルソンがもう一本作ったのが、蟻映画「キラー・アーンツ」(「ANTS/蟻の大群大襲来」)です。アンツでなくアーンツと表記する当たりに、日本人のこだわりが感じられますな。ザ・インターネット。

 蟻の映画といえばバイロン・ハスキンの「黒い絨毯」、ソウル・バスの「戦慄!昆虫パニック」、ジョー・ダンテの「マチネー」内の劇中映画「MANTS!」がありますが……なんて同種の題名をダラダラ書き綴っているのは、この種の映画のパンフの解説文を真似ているだけで、特に意味はありません。

 で、本題に入りましょう。この映画、主役はリゾートにあるホテルが舞台です。ホテルの売却話が持ちかけられて、売る、売らないでオーナーの母娘が対立しています。ところがホテルの近くでは環境汚染が進んでいて、それによって猛毒を持った蟻の大群が狂暴化、暴れ出します。最初は付近の住民が襲われているだけですんでいたのですが、やがて蟻の大群がホテルを襲撃、建物は蟻だらけになります。この映画の面白いところはここで、狂暴化した蟻がホテルに集結したため、まわりは安全、どうしたどうしたと、野次馬がホテルの周囲に群がります。そこにマスコミのヘリが飛来、着陸しようとしたところ、プロペラの風圧で蟻が飛び散り、ギャラリーがギャアギャア悲鳴を上げるという、なんとも牧歌的な光景が繰り広げられます。

 その頃最上階ではオーナーの娘、その恋人、身勝手な中年男の三人が取り残されていました。下からの知らせで、殺虫剤を持った救助隊が到着するのに時間がかかり、三人の部屋に蟻が押し寄せるのに間に合わないことが判明。生き残るには、蟻を刺激しないよう、とにかくじっとして動かずにいる事しかないという結論になります。というわけで、三人は蟻が下から押し寄せて来るのを、体を縛って固定し、丸めた紙を口にくわえて呼吸し、顔にたかった蟻を息で刺激しない状態で、ひたすらじっと待ちます。ちなみに役者さんは撮影のために体に砂糖水を塗っていたそうで、三人とも体中蟻だらけになります。役者も大変ですね。当然中年男が耐えられなくなって立ち上がると、絶叫しながら走り回り、ベランダからポーンと、十数メートル下のプールに向かって飛び降ります。もちろんプールに行くことかなわず、ベランダとプールの間のコンクリートの地面に叩き付けられて死亡。懸命に耐えた二人は救助隊に助けられ、さらにホテルは売却することで話がまとまり母娘は仲良くなってメデタシメデタシと、実に意外性のないお話です。まあお話は型どおりすぎてつまらないですが、蟻の群の特撮場面はがんばっていたので、蟻マニアの方はどうぞ。


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