−妖怪コスプレ女ことダリル・ハンナ−

 ダリル・ハンナといえば,80年代を駆け抜けていった感の強い女優である。おそらく日本に初お目見えしたのは78年のブライアン・デ・パルマ監督『フューリー』でエイミー・アービングをいじめる女学生集団の一人に扮していたのが最初だと思われるが、看板女優として活躍していた80年代後半から90年代初頭の『ウォール街』『愛しのロクサーヌ』『マグノリアの花たち』『クレイジー・ピープル』などといった作品でのハンナ嬢は,一見気の強そうなインテリながらどこか抜けてて、一度よろめくとメロメロになってしまうキャラクターが男心をくすぐった。

 とはいえそんなハンナ嬢が過ごした黄金期は瞬く間で,93年の『ラブリー・オールドメン』以降は日本で公開される作品が激減。アメリカではまだコンスタントに映画出演を続けているとはいうものの,結局この人の代表作はと思い起こすと、コスプレ系のキャラクターばかりが思い浮かぶ。

 その走りとなったのが、『ブレードランナー』(82年)。ここでハンナ嬢は逃亡レプリカント・プリス役で登場。行き場のない弱々しそうな女を演じてタイレル社の技術者の家に潜り込んだかと思うと、パンクヘアの白塗り顔にハイレグレオタード姿といういでたちでパワフルにハリソン・フォードと対決、連続倒立と太股締めを決めて射殺される。

 そして出世作となった『スプラッシュ』(84年)では、トム・ハンクスを夢中にさせる人魚の役で登場。一目惚れしたハンクスを追って都会に出現、ただひたすら主人公を追っかけて純情一路に甘えてくる姿もキュートだったが、やはり魚の着ぐるみを下半身にまとって格好で水中を泳いだり、お風呂に浸かったり、ニューヨークの路上で這い回ったりする姿が印象的であった。

 日本未公開作ながら『The Clan of the Cave Bear』(86年)では、数々の部族を渡り歩く運命に翻弄される原始人女をギャートルズスタイルで熱演。この後ハンナ嬢は絶頂期の80年代後半を迎え、ケネディ家の御曹司とロマンスが囁かれ、極めて健康的な役しかやらなかったが、ボンボンとの恋がうまくいかなかった反動か、突然『ジャイアント・ウーマン』(93年)では身長50フィートの巨大女に扮し、ビキニスタイルの衣装で巨大化したボディを包み、半泣きになりながら、女たらしの亭主を懲らしめようと追っかけ回す。実感こもってます。

 なんだかんだ言っても、ハンナ嬢は,こういったイロモノがハマっている。実際ダリル・ハンナって、肩幅ががっしりしていて肉体はちょっとマッチョ系だし、顎のラインもけっこうガッシリしていて中性的。メロドラマより、怪物&アクション系映画の方が似合う気がする。とはいえ、『青い恋人たち』(82年)のグラビアガール的な役も実はお気に入りなんだけどね。


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