日本の実写マンガ映画

最新更新:0課の女・赤い手錠

日本の実写マンガ映画です。映画度評価は★★★★★、 マンガ度は★★★★★で満点です



【あ】


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【さ】

■0課の女・赤い手錠★★★★★ New!

'74年東映 監督野田幸男 出演 杉本美樹

【原作】

 篠原とおる「0課の女」:警視庁1課でも2課でもない0課所属の女刑事、零はその肉体と捜査能力を駆使して、次々と悪人達を追い詰め、殺して いく。

【映画】

 ディスコで踊る零(杉本美樹)をナンパし、ラブホテルに連れ込む、アルマニア大使館付一等書記官リチャード・サク ソン。彼は性的倒錯者で、以前同じ手でホテルに連れ込んだ黒人女性エミーを責め殺していた。リチャードの身分証明書を破り捨てると、襲いかかる彼を赤い手錠で捕縛し、拳銃で股間をぶち抜いて射殺した零は、即座に留置所にぶち込まれる。その頃、刑務所を出所したばかりのセキ(郷瑛治)とその弟アキ、ノロ、稲葉、サブ(荒木一郎)の五人組がアベックを襲撃。男は殺され、女は輪姦されて、彼等の溜まり場であるバー・マンハッタンに連れ去られる。そこのマダ ム(三原葉子)により、彼女が民政党次期総裁南雲善悟(丹波哲郎)の娘杏子である事が 判明。身代金三千万円を要求するセキ達に、南雲の「一切を極秘に処理せよ」という要 求に沿って、草加(室田日出男)ら警察は、国交関係を考慮してリチャード殺しを表立って処理できず、その存在を持て余していた零を潜入刑事−−0課の刑事として起用する。「人質は生きたまま連れ戻す事。犯人は射殺しようが好きなようにしろ」。新宿西口に身代金受け取りに来て刑事に追い詰められたセキを助け、マンハッタンに潜入する零。警察の手先と疑われた零 は拷問され強姦されるが、逆に零が刑事であることを知っていたマダムを殺害。「あたし を汚い刑事だなんて疑う奴は、みんなああなるって事さ」。零は身代金を1億円に増額 する事を提案、それを受け取りに行ったノロは草加と南雲の秘書達に殺され、彼のポケットに零が入れていたマッハッタンのマッチにより、セキ達の隠れ家と仲間の人数が判明する。戻って来ないノロに業を煮やしてセキ達は仲間割れを始める。「これから妙なことをする奴はな、俺がみんなぶっ殺す ぞ」。セキがそう言って稲葉達を締めた直後、アキが杏子を連れて逃走しようとした事が発覚する。セキはアキをビール瓶で撲殺。ショックを受けて暴れる杏子 に麻薬が打たれる。

 セキ達はマンハッタンを脱出、ゴーストタウンと化した米軍住宅でただ一軒英語教室(?)として残っ ていた民家に侵入、そこにいた6人を人質に立て籠もる。実の弟を殺したうえ、人質6人 を全裸にして数珠つなぎにしていたぶるセキの狂気に怖じ気づいて逃走した稲葉は南雲 と草加達に拉致され、ガスバーナーで拷問された挙げ句スパイとしてセキ達のもとに送り込まれる。しかし計画は失敗。稲葉はセキに射殺され、零の正体がば れてしまう。ストーブを倒して人質のいる家に火を放ったセキは、サブと共に杏子と零を人質に南雲達の眼前を自動車で逃走。「あの杏子はもはやわしの娘とは思えん……スキャンダルを防ぐ為に、娘は事故死または病死するんだ。今後これまでの全 ての事実を消し去り、一切の証拠を隠滅する事が君たちの仕事になる。もちろんあの潜入している女もだ」。南雲の命を受けた草加達がセキ達を追跡。セキの生まれ故郷のゴミ溜めと化したゴーストタウンでセキ達と人質 ごと彼等を殺そうとする草加の血まみれの銃撃が繰り広げられ、草加はサブを射殺するも、隠れていたドラム缶をセキに銃撃・爆破され瀕死の重傷を負う。その 隙を突いてセキに手錠でつながれていた零が反撃を開始、死闘の末零はセキを仕留める。そしてなおも自分を殺そうとする草加にとどめを刺した零は、ボロボロの服装の杏子を警視庁の前に連れて行くと、警察手帳を破り捨てて、姿を消すのだった。

【解説】

 篠原とおるの漫画は、その内容 の乏しさとワンパターンぶりはともかく、美人の女が脱ぎまくって銃を撃ちまくるというB級映画に最適な設定が好まれるのだろう、現在もビデオ映画でお目にかかる機会が多い(「さそり」「女刑事サシバ」など)。その代表的な映 画化作品が伊藤俊也監督と梶芽衣子主演で大ヒットを飛ばし、今なお支持者の多い「女囚 701号・さそり」である。しかし「さそり」シリーズは梶と製作者側の対立が問題化 しシリーズの存在が危ぶまれ、それに変わる柱としてシリーズ化を期待されて登場したのが本作である(結局杉本の引退によりそれは続編は登場しなかった が)。実際本作が「さそり」との共通点というか、影響を受けている点は多々見受けられるが、その最たるものはやはり主人公が反権力の象徴として位置づけられている点 だろう(原作漫画には、そんな要素は殆ど見受けられない)。実際、ラスト杏子が自動車から降りて警視庁に歩いていく場面は、本当に桜田門前の警視庁前でロケしている(笑)。本作 ではその矛先は自分の立場のためには娘をも抹殺しようとエゴを剥き出しにする政治家、それの走狗と化した警察や国家権力に向けられつつ、随所に「外交特権を振り回す外人」「横須賀の米軍住宅 跡」「基地近くのゴーストタウンと化した歓楽街でパンパンから生まれたセキ」といった要素を散りばめ、当時返還されたばかりの沖縄をめぐる日本人の米軍への不満と疑念を想起させている。

 この映画については、原作漫画と映画の違いやキャラクターのイメージのギャップを述べても無意味で ある。「さそり」と同じく、原作の設定だけいただいて製作側がどれだけ映画として面白 い作品を作り上げたかを見るべきだろう。そして本作は、実写マンガ映画としてという より、一つのハードアクション映画として、見事な出来映えとなっている。主演の杉本美樹は「温泉スッポン芸 者」「女番 長」シリーズなど、平たく言えば東映ソフトポルノ路線を池玲子と共に支えた女優であ り、その演技や台詞回しは水準以下である(主題歌「女の爪あと」もヘタクソなのが悲しい)。その代わりどんな苦境 でも耐え抜く潜入刑事役としては適役で、殴られ犯され目の前で流血沙汰が起ころう と、屁とも思わず突き進んでいく(同じ原作をビデオ映画化した「ゼロ・ウーマン」シリーズの女優など、本作で見せた杉本の演技に比べればオママゴト以下の稚戯に等しい)。「さそり」で 梶が見せた全身黒一色のマキシに対抗してか、原色の緑色のミニスカに深紅のコート、そ して真っ赤な(ペンキを塗られただけの)手錠と拳銃、警察手帳というファッションも 強烈。そしてそれ以上に、敵役の郷の何かに取り憑かれたかのごとく狂気を垣間見せる熱演(実弟アキを殺した当たりから、完全にイっている)、悪役の室田や 丹波の好演が光る。また、ノロが草加達に捕まった直後に秘書達が荒れ地に死体を埋める ための穴を掘り出すなど、その野田演出による冷酷な世界観は徹底している。

 クライマックス、風が吹き荒れ ゴミの舞うゴーストタウンで杉本、室田、郷達が見せる死闘は、その廃墟をうまく生か した美術とアクション映画を得意とする野田幸男の演出がスパークし、低予算さが明らかながらも、本当に息もつかせぬ見せ場となっている。ポンコツ自動車に 銃弾がぶち込まれ、フロントガラスをぶち破って血まみれの南雲の秘書が飛び出し、それを払いのけて草加が自動車を運転して追跡、ゴーストタウンで拳銃であ りったけの弾を撃てば、セキは手錠で縛り付けた杏子と零を引きずり回して便所や廃屋を走りながら猟銃で応射、そして最後、炎上する火の見櫓下でチェーン・デスマッチを繰り広げるセキと零! ちょっと零の見せ場が少ないのは前述の杉本の問題だと思うが、ここまで見て興奮しない人間がいたら、テレビのファッショナブルな刑事物でも観て余生を過ごし てほしい。ラスト杏子に新聞記者が群がる箇所は拙速な感がするが、低予算ながら出演者と製作側のセンスと熱意で、本作は日本映画界屈指の名作アクション映画として仕上がっている。


【た】

■デビルマン★★★★★

'04年東映 監督那須博之 出演伊崎央登

【原作】

永井豪「デビルマン」: 親友の飛鳥了から、先住人類・デーモン族が復活して人類滅亡を図っていることを知らされた不動明は、デーモンと合体しデビルマンとなる。二人はシレーヌや ジンメン等のデーモンを倒すが、ゼノン率いるデーモン族は人類への総攻撃を開始。人類はデーモン族の脅威を知るが、雷沼教授、そして飛鳥了の誘導により、 同士討ちを開始。もはや人類の最大の敵はデーモンではなく、人類そのものとなっていった。そんな中聖書の黙示録にある最終戦争が、デーモン族とデビルマン 軍団の戦いだと予見した明はデビルマン軍団の結成を進めるが、愛する牧村美樹の他、家族同様に過ごしていた牧村家が彼らをデーモンと疑った人間達の手に よって惨殺される。人類を見限ると同時に、デーモン族の首領=サタンの正体を現した飛鳥了との対決を決意した不動明。そして数年後、人類が滅んだ地球上 で、デーモン族とデビルマンの決戦が始まるのだった。

【映画】

三流エロ出版社の編集者村木(蟹江敬三)は、ある日偶然見たブルーフィルムの中で、不良学生達に輪姦される教育実習生役で出演している名美(水 原ゆう紀)に惚れ込み、婚約者の裕子もそっちのけで彼女を捜す。しかし見つけ出した彼女は、あのフィルムは事実であり、それを見て脅迫してくる不特定多数 の男達から逃げる為に、ひたすら隠れ潜むように生活していることを知らされる。村木の説得に名美は心動かされるが、再会を約束した日に村木は警察に誤認逮捕されて待ち合わせ場所に行くこと ができず、裏切られたと思った名美は行きずりの男に身を任せ、姿を消す。3年後、裕子と結婚して出版社を軌道に乗せた村木は、場末の飲み屋で名美に再会する。1枚のレコードを出したきりで落ちぶれ た歌手でヒモのマー坊(草薙良一)と暮らす名美は、夜な夜な飲み屋の2階でマー坊や酔 漢相手にシロクロショーを演じる女に成り下がっていた。「ひどすぎる……ひどすぎる よ」。夜明けの飲み屋街で放心して佇む村木に名美が近寄るが、もはや二人は二度と同じ社会で生きられない事を痛感するだけだった。

【解説】

その独特の情感溢れる世

■天使のはらわた・赤い教室★★★★★★

'79年にっかつ 監督曽根中生 出演蟹江敬三

【原作】

石井隆「赤い教室」:高 校のやや神経質なほど生真面目な女教師・土屋名美。しかし彼女は教育実習生時代に輪姦されたという噂が校内に立ち、精神的に追い詰められ、やがて教壇の上 に寝転がって裸の股を広げるのだった。

【映画】

三流エロ出版社の編集者村木(蟹江敬三)は、ある日偶然見たブルーフィルムの中で、不良学生達に輪姦される教育実習生役で出演している名美(水原ゆう紀)に惚れ込み、婚約者の裕子も そっちのけで彼女を捜す。しかし見つけ出した彼女は、あのフィルムは事実であり、それを見て脅迫してくる不特定多数の男達から逃げる為に、ひたすら隠れ潜 むように生活していることを知らされる。村木の説得に名美は心動かされるが、再会を約束した日に村木は警察に誤認逮捕されて待ち合わせ場所に行くこと ができず、裏切られたと思った名美は行きずりの男に身を任せ、姿を消す。3年後、裕子と結婚して出版社を軌道に乗せた村木は、場末の飲み屋で名美に再会する。1枚のレコードを出したきりで落ちぶれ た歌手でヒモのマー坊(草薙良一)と暮らす名美は、夜な夜な飲み屋の2階でマー坊や酔 漢相手にシロクロショーを演じる女に成り下がっていた。「ひどすぎる……ひどすぎる よ」。夜明けの飲み屋街で放心して佇む村木に名美が近寄るが、もはや二人は二度と同じ社会で生きられない事を痛感するだけだった。

【解説】

その独特の情感溢れる世界で、今や日本映画界で地歩を築いた感のある石井隆の関わった(原作、脚本、監督)作品の中 で、秀作の誉れ高い作品だが、一読必涙のオリジナル脚本を分数か演出の都合で刈り込んだ本作は、ところどころ説明不足や物足りない部分が残る。例えば脚本では、飲み屋街に佇 んだ村木が背中に立っている名美に「もう一度やり直そう」と言ってゆっくり振り返ると、名 美の姿は無く、閑散とした飲み屋街が目に映るだけ……というラストだが、映画では会 話を交わして無言で佇む村木と名美が映る水たまりにエンドマークが入って終わりという感じ。見ていてあまりのむごたらしい展開に胸が痛む場面も多いが、そ れがトータルでのドラマ的な感動に収束されたとは言い難い。'90年代では不可能な事は承知だが、今一度リメイクしてほしい作品。

■ドカベン★★★★★★★★

'77東映 監督鈴木則文 出演橋本三智弘

【原作】

 水島新司「ドカベン」:鷹丘中学に転入してきた山田太郎は、単細胞ながら侠気に溢れる岩鬼正美と親友になり、共に柔道部を経て野球部に入 り、音楽と運動のセンスに優れた殿馬一人等と共に活躍。彼等は明訓高校に進学し、山田を追って来た投手里中智、主将の土井垣等と共に明訓高校野球部は常勝 野球部として、全国の強豪高校を打ち破って行く。

【映画】

 暴れん坊の岩鬼(高品正弘)がいる明訓高校に、ある日山田太郎(橋本三智弘)が転校して来る。不言 実行型の彼は、その抜群の運動センスを見抜いた長島(永島敏行)の誘いを断って、人数が足らずに軽んじられている柔道部に入部。彼を追って岩鬼が入部。主 将の木下等と共にバックドロップ投げを得意とする影丸率いる花園高校を破る等大会を勝ち抜いていく明訓柔道部だが、武蔵高校賀間(無双大介)との決勝戦で の敗退で八百長疑惑をかけられた山田は退部。同じ頃試合で監督(中田博久)の敬遠策を無視して、チームを敗北に導いた長島はその責任を取って退部。それを 追って全部員が退部。明訓野球部は危機に瀕するが、山田や岩鬼達旧柔道部員、そして殿馬(川谷拓三)や徳川監督(水島新司)等によって再建され、長島と共 に甲子園目指して進撃を開始するのだった。

【解説】

 数ある実写マンガ映画の中で、その娯楽度・マンガ度・知名度で王座に君臨する本作。物語は原作では鷹丘中学で 起こる柔道部騒動と野球部再建までの道のりを、いきなり明訓高校に置き換えるという荒 技を見せる(脚 本・掛札昌裕)。原作を映画の上映時間に凝縮する為と、原作や当時放映されていた TVアニメが明訓高校になっているのでそれに合わせるための苦肉の策(ちなみに本作の音 楽・主題歌はTVアニメ版のものを流用している)……以前に東映の大部屋俳優が扮せ られるのが高校生が限度という現実的な問題によるものであろうが、もし映画が巷間に噂されていたシリーズ化でもされた日には、土井垣や里中はど うやって登場させる気だったのだろうか? いや、それ以前に原作では中学卒業後赤城山高校で野球に転校、両投げ投手として山田を苦しめた木下の立場はどう なっただろう? などとありもしない話を詮索しても仕方がない。

 出演者は主要キャラクターの山田・岩鬼・長島は公募されて選ばれたが、引き締まった筋肉太りの山田 太郎を演じた橋本は贅肉太りの印象が強く演技も今一つ、意志の強さと冷静さを持つ長島 を演じた永島(洒落かい)は無愛想で軍人臭すぎるのに比べて、岩鬼に扮して、怪しい 大阪弁でぬおおーと吼える高品が、外見もキャラクターも雰囲気を掴んでいて絶品(彼はその後特撮番組「大鉄人17」に、全く同じ服装・同じキャラクターの岩山鉄五郎 ことガンテツ役で出演する)。その他、原作者水島新司扮する徳川監督、本当に爪先立 ちして回転して「秘打・白鳥の湖」を見せる殿馬役の川谷(どこが高校生だ!)、そして岩鬼の思い人で不美人の夏子にそばかすおてもやんメイクを施したマッハ文朱という布陣は、言語に絶するもの凄さ。

 肝心の映画の出来はというと、東映の、いや日本の実写マンガ映画の双巨頭の一人鈴木則文監督だ けあって、実に見事な出来映え。冒頭の「ドカベン」を買った少年達の前に登場したドカベンが走り去って行き、彼等がふと横を見ると漫画の看板のドカベンの部分に穴が開いて無くなっているという無理矢理なオープニングから、娯楽の王道「トラック野郎」シリーズを生み出した鈴木節はコテコテのドタバタを交えてテンションは上がるのみ。空手部に股間を突き入れられた岩鬼 がナニを勃起させるとか、岩鬼にぶん投げられて大怪我した柔道部員丹下の病名が「複雑怪奇骨折」で折れた骨が「イワキ」の文字型に折れているとか、岩鬼の 家の女中が全員腰元スタイルとか、特撮を駆使して殿馬が宙を飛んだり、柔道大会会場へ 走る岩鬼が電車を追い抜いたり、映画ならではの味付けが随所に盛り込まれている。作 劇的には新生野球部の練習風景に甲子園のバンクフィルムが挿入されて終わりという、野球映画と呼ぶにはあまりにも物足りない終わり方が気になるが、この大味さ・刹那さが実に娯楽映画としていい味を出している。ちなみに私のまぶたには、初日の今は無き渋谷"ハチブドー酒"東映で、明訓のユニフォームを着て舞台挨拶をする永島敏行が 焼き付いている事も付け加えておこう(笑)。


【な】


【は】


【ま】


【や】

【ら】


【わ】


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